笑い話 いろ色艶笑落語 1
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北斎 富嶽36景 武陽佃島

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笑 落 語 1
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道鏡


 えー、『道鏡』というお噺をば一席うかがいますが・・・・。
この、男性というものはすべからく、自分のもんが大きいとか小さいとか、自分の持ちものをとかく気にする方が多いようですナ。なんかこの・・・週刊誌やなんかの身下相談なんかを見ましても、自分のは短小ではなかろうかちゅう悩みがずいぶん出ておりますようですが、まァ大きいということになりますと、古来、このわが国では弓削道鏡(ゆげのどうきょう)という人がいちばん大きかったそうで、これは丹波国弓削村(たんばのくにゆげむら)の生まれやったと申しますが、おもしろいですナ。エー、川柳と申しますものはずいぶんおもしろいことを申します。
  弓削村で面(つら)じゅう鼻の子が生まれ   てなことを申します。


 鼻の大きいのはあそこが大きいんやそうですナ。こらァどなたがお決めになりましたものか、昔から鼻の大きいのはあそこが大きい、え、口の大きい女性はあそこが大きいてなことを申しますが
  弓削村で面じゅう鼻の子が生まれ
 なかなかおもしろい川柳で、弓削道鏡が生まれたときは顔じゅうが鼻やったと申しますんですから恐れ入りますナ。
 さて、そういう子供がでけてみなはれ、そらもうおかあちゃんてなもんは心配でしょうがない。「こんな大きいのン、これどうもないやろかしら・・・」


 えー、われわれ小さい時分に、よくみみずにおしっこをかけると、あそこが腫れるてなことを申しましてナ、また事実みみずというのは電波みたいなもんがあるんやそうで、この電波がおしっこを伝わってらっきょみたいなもんの先ィ、ビビビッとこうくるんですナ。それであれが腫れるてなことを申します。ほんまかうそかわかりませんが・・・・。
 えー、で、またこのみみずにおしっこをかけて腫れあがったやつは、このみみずに「ごめんなさい、ごめんなさい」ちゅうてみみずを洗うてやりますと、これが癒(なお)ると、こう言う。ですからよく道端でおしっこをするときには、われわれ子供の時分に、「めめずも蛙も、どなたもごめん」ちゅうておしっこしたもんですけども・・・・。


 えー、川柳のほうでもやっぱりそれを申しますがナ、
  数千のみみずを洗う弓削の母
 という川柳がございます。こらァもうおかはんもえらいこっちゃったでしょうナ。こんな大きいのはどこでみみずにおしっこをかけよったんかしら、またどこの道端でおしっこをしたときにみみずにかかったんかしらと、母親は心配で村じゅうのみみずを取ってきて、壺へいれましてナ、これをパーッと壺の中で洗うたというぐらいのもんで、そのときにさわってみた感触が自分のンとあんまり似てたんで、弓削道鏡のおかはんは、
「ははァ、するとあたいのはみみず千匹かしら・・・・」
そんなこと思うたか思わんか知りませんが、
  村じゅうのみみずを洗う弓削の母
 という川柳もあるぐらいでございます。かなり大きかったんでございましょうなァ。

笑い話 艶笑落語 『道鏡』 下につづく


笑い話 艶笑落語 『道鏡』 つづき

 これが年ごろになりますと、
  道鏡は座ると膝が三つ出来
 てなことを申します。まァ正座いたしますと膝が三つあるように見えたちゅンですさかいに大変なもんで、いかに大きかったか。
  道鏡の幼名たしか馬之助
 てな川柳があるぐらいのもんですさかい、馬なみの持主やったんですナ。
 それからお風呂へ入るときはえらいこっちゃったそうですな。普通まァ誰でもお風呂へ入りますときには、右足なり左足なりからお風呂へつけます。
 ドボン・・・ドボン・・・(小さく)ポチャンと、これがたいがい風呂へ入る音。え?
 いえ、足が一本ずつね、ドボン・・・ドボン・・・と入って、まん中の足がジャポンと、こう言いまンねんナ。
 ところがあんた、弓削道鏡はそやなかったそうですナ。(小さく)、ドボン・・・ドボン・・・(大きく)ドッブーンと、こう言うたちゅンですさかいに、ハッハハハハ、恐ろしい噺があったもんで・・・・。
 また、この道鏡が体を洗うとりますときに、
 「おい、おい、おいッ」
 呼ばれたんで
 「なんやァ?」
 ちゅうてひょっと立とうとしたら、おのれのもんをおのれで踏んでこけたちゅンですさかい、
 「痛いッ」
 大騒ぎでございますが、よほど大きかったとみえますナ。


 ところが年ごろになりますと、この道鏡の相手をするご婦人がない。たまに町へ出ましてお女郎買いに行きましても、相手をするやつがみないやがって逃げてしまう。
 「あァ、世の中にわしぐらい、はかない人間はない。遂に一生を、女のひとというものを知らんと死んでしまうのンかしら」
 嘆き悲しんでおりますと、あァ神さんというものはうまいことこしらえてくれはるもんですナ。時のやんごとなきお方が、これが大変に間口の広いものをお持ちやったそうで、どういう人がお相手をいたしましてもご満足あそばされるということがない。
 えー、これまた嘆き悲しんでおりますところへ、道鏡という非常に巨大なモノを持った男がいるということが、都へ聞こえまして、どこからともなくお耳に入って、「その者を召しだすように」ということで勅使が下がりました。弓削村へたずねてまいりまして、道鏡の家を訪れた。
 「こちらが道鏡殿のお宅でござるか」
 「へへーッ」
 「うむ。恐れ多くも畏(かしこ)きあたりよりの勅(みことのり)によって、麻呂が検分にまいった」
 マロが来たんですナ、これが・・・・で、このマロが来て、”ロー”やなしに”ラー”のほうを調べたというんですからナ、そらァおもしろいもんができあがったでしょう。
  天が下二本はないと勅使ほめ
 と申しますから、いやァ、
 「天下広しといえどもこれほどのものは二つとござるまい。麻呂も満足に思うどよ」
  天が下二本はないと勅使ほめ
 ということがございます。

笑い話 艶笑落語 『道鏡』 下につづく

笑い話 艶笑落語 『道鏡』 つづき

 さて、ところがいよいよこれが都へのぼるということになりまして、それまではよほど間口が広かったんでございますナ、
  道鏡が出るまで牛蒡(ごぼう)洗うよう
 どんな方がお相手をしても思いが至らなんだ。今度こそはというわけで、道鏡が控えておりますところ、御簾(みす)の向こうからやんごとなきお方が、声をおかけになろうという段どり。
  氏なくして道鏡玉の腹に乗り
 とも申しますナ。”氏なくして乗る玉の輿”てなことを申しますが、玉の輿やないんですナ。
  氏なくして道鏡玉の腹に乗り
 うまいことしよったもんですナ。


 えー、さて、はじめてのおめみえということになりますと、しかし最初から、「さァ、どうぞこっちへ」、「へえ、あんたに逢いたかったんです」「どうぞお乗り」と、そうはいきません。やんごとなきお方でございますから、御簾を隔てまして道鏡が控える。
 「弓削道鏡とはそのほうか」
 とお声がかかる。うるわしい声やったそうですナ。
 「苦しゅうない、面(おもて)をあげい。・・・いや、そのほうの面ではない。もうひとつほうの面もあげてみせい」
 「はッ、なれど・・・」
 「苦しゅうない、あげてみせい」
 もうこのときには道鏡、自分のモノを持て余すぐらいに大きィなってたんですナ。ですからモノをお腹のほうへひっつけまして、その上から帯で結んで誤魔化してたというぐらいのもんで、膝が三つになってはさすがに申しわけないと思うたんでしょう。
 「では恐れながら・・・」
 するするするッと帯をほどきまして、前をくつろげる。咽喉のあたりまでこようかというやつが隆々りゅうーッと天を目ざしていなないていたと申します。いななくというと馬のようですが、いや、馬がお辞儀をするというぐらいのやつが、高く天を目ざしてそびえ立っております。たいがい、やんごとなきお方の前でございますと、もう、ちィーそうなるもんですが、えー、大体においてびくっとしただけでも縮みあがるというぐらいのもんですから・・・・。これがもう袋を供に連れまして天を目ざしていなないている。
 あそこも太いが、肝も太いという、男は道鏡(度胸)でございます。

定本艶笑落語 小島貞二編より

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