1
十七、八ンなる下女が、台所で何かゴソゴソやっておりましたが、そこにありましたさつま芋、ちょうど手頃な奴を一本、ソーッと袂へかくして出てゆきます。そうして雪隠(トイレ)へはいる・・・。 庭で薪わりをしながら、こいつを見ておりました権助が、「あら、妙だな」てんで、仕事の手を休めて、うしろからソッと行って、雪隠の窓の下の明りとりのところからのぞいてみるてえと、下女ァナ、
さつま芋をにぎって、しばらく指先の感触をたのしんでおりましたが、そのうちに自分の穴へとあてがいます。  あてがっているうちに、スポッと入る。芋の長い奴を持ってくりゃァよかったのに、短くて丸い奴を持って来たもんで、そっくりかくれんぼしちゃったんですナ。さァ大変!指ィつっ込んだが、出て来ません。しばらく考えておりましたが、下女は何やらうなずきましてナ、にぎりこぶしをかためて、お尻の上をストンと叩く。
するってえと、芋ァスポンととび出して、のぞいておりました権助の、眉間のところへドサーン! 腰をぬかした権助ァ、思わず、 「わッ、イモをつぶした!」
定本艶笑落語 小島貞二編より
2
えー、いつでもどこでも、若い衆が集まると、お色気のほうに話がゆくもので、 「あァ、おいらおぼこ(純情)な 生娘が好きだな。小間物屋のお久ちゃん、いいよなァ、あの娘は」 「いやいや、しんねこ(人目をさけて語り合うこと)は年増に限るぜ、どうだい、横丁の師匠の、あの色っぽいこと」 「俺は地女より、商売女がいい。吉原の八幡桜の、千歳てぇ 妓は、そりゃあもう、飛びっきりだぜ。女は女郎に限らあ」  「冗談いっちゃあいけねえ。モノにしたいなァ、大きな声じゃいえねえが、尼さんだよ。こんど法然寺に来た若い比丘尼。見ただけで、ブルッと来ちゃう」
勝手なことをいい合っておりますのを横目に一人が、 「おめえら、みんな若えな。何といっても色は後家さんに限ると、むかしからいうだろう。伊勢屋の若旦那が死んで、後家さんになったあのお花さん。あの艶やかさ、色っぽさはたまらねえじゃねえか」 「あー、そうだ」 と、たちまち衆議一決して、後家さんが一番ということになった。 中の一人が、無精ひげを撫ぜながら、 「ああ、俺の女房も、早く後家にしてみてえ」
定本艶笑落語 小島貞二編より
3
えー、ご新造さんがお風呂へはいっていると、かわいがっている猫のタマが、ニャアニャアと大騒ぎをはじめましてナ。 「おナベや、タマはどうしたんだい?」 「ヘエ、もうバカなんでござえます。さっき魚屋から赤貝を買ったんですが・・・」 「あア、そうだったねエ、それで?」 「タマが、それにチョッカイを出しましたもンだで、赤貝が驚いてギュッとカラをを締めたんでごぜえます。だもンだから前足ィはさまれて、へェ、大騒ぎで・・・」
「まアま、かわいそうじゃないの、え、面白がって見てちゃいけませんよ。おまえ、ちょいとユカタ貸しとくれ。それから、なンかコジあける物をネ。・・・まアまア、タマや、バカだね、おまえ。今、とってあげるよ」  ご新造さん、 裸身にユカタを一枚フワリと羽織りましてナ、お手ずから、赤貝のカラをコジあけて、とってやる。 「ホラ、とれた、痛かったでしょう、タマや・・・」 と猫をフトコロヘ抱きあげると、湯上りの肌でございます。猫がツーッとすべって、
ご新造さんの下腹へ落っこちて行きましたが、とたんに、毛を逆立てて、 「フーウッ!!・・・」
定本艶笑落語 小島貞二編より
4 道後の湯で 源敏という好き者がたっぷりつかっているとき、一人の尼法師が入湯して来た。 上品でなまめかしい、抱きつきたいがそうはいかない。そこでこっそり足を伸ばして、股ぐらとおぼしいあたりをコチョコチョ、尼はびっくりして怒る。 敏はすかさず、 「とても世を よそに 古江のあま小舟 葦のさわりをなに 厭うらん」と詠む。
つまり遠浅の海で、海草とりをしている 海女(尼)の舟が、入江の葦(足)に触れたからといって、別に気にすることはありますまい、という図々しい歌だ。 尼さんもさすが歌よみ、半分オツな気分になったのか、 「さらば 早く 棹さし寄せよ世の海の 海松布(食用の海草)をなおも いとうあま舟」と返歌した。 つまり、あたしはもう男を絶った尼。人の見る目(海松布)が大変だから、誰も来ないうちに、棹を私の舟にさしてごらん、というのだから、これはどっちもどっち。
定本艶笑落語 小島貞二編より
5
嫁入りした娘が里帰りして来た。 おっかさんが 「どうだい、何かかわったことはないかえ」ときくと、 「まくらは寝るとき首の下に当てるものとばかり思ってましたが、向こうさんでは腰の下に敷けとおっしゃいます」
定本艶笑落語 小島貞二編より
イラストは 【Yahooコンピュータ(デジタル素材)】 【Coco】 よりお借りしました。
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