笑い話 いろ色お色気小咄 3
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北斎 富嶽36景 隅田川関屋の里

色 気 小 咄 3
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小咄8 後家願望


えー、いつでもどこでも、若い衆が集まると、お色気のほうに話がゆくもので、
「あァ、おいらおぼこ(純情)な生娘きむすめが好きだな。小間物屋のお久ちゃん、いいよなァ、あの娘は」
「いやいや、しんねこ(人目をさけて語り合うこと)は年増に限るぜ、どうだい、横丁の師匠の、あの色っぽいこと」
「俺は地女より、商売女がいい。吉原の八幡桜の、千歳てぇは、そりゃあもう、飛びっきりだぜ。女は女郎に限らあ」
「冗談いっちゃあいけねえ。モノにしたいなァ、大きな声じゃいえねえが、尼さんだよ。こんど法然寺に来た若い比丘尼。見ただけで、ブルッと来ちゃう」
勝手なことをいい合っておりますのを横目に一人が、
「おめえら、みんな若えな。何といっても色は後家さんに限ると、むかしからいうだろう。伊勢屋の若旦那が死んで、後家さんになったあのお花さん。あの艶やかさ、色っぽさはたまらねえじゃねえか」
「あー、そうだ」
と、たちまち衆議一決して、後家さんが一番ということになった。
中の一人が、無精ひげを撫ぜながら、
「ああ、俺の女房も、早く後家にしてみてえ」

定本艶笑落語 小島貞二編より

小咄9 赤貝


えー、ご新造さんがお風呂へはいっていると、かわいがっている猫のタマが、ニャアニャアと大騒ぎをはじめましてナ。
「おナベや、タマはどうしたんだい?」
「ヘエ、もうバカなんでござえます。さっき魚屋から赤貝を買ったんですが・・・」
「あア、そうだったねエ、それで?」
「タマが、それにチョッカイを出しましたもンだで、赤貝が驚いてギュッとカラをを締めたんでごぜえます。だもンだから前足ィはさまれて、へェ、大騒ぎで・・・」
「まアま、かわいそうじゃないの、え、面白がって見てちゃいけませんよ。おまえ、ちょいとユカタ貸しとくれ。それから、なンかコジあける物をネ。・・・まアまア、タマや、バカだね、おまえ。今、とってあげるよ」


ご新造さん、裸身はだかにユカタを一枚フワリと羽織りましてナ、お手ずから、赤貝のカラをコジあけて、とってやる。
「ホラ、とれた、痛かったでしょう、タマや・・・」
と猫をフトコロヘ抱きあげると、湯上りの肌でございます。猫がツーッとすべって、ご新造さんの下腹へ落っこちて行きましたが、とたんに、毛を逆立てて、
「フーウッ!!・・・」

定本艶笑落語 小島貞二編より

小咄10 10


道後の湯で源敏みなもとのさとるという好き者がたっぷりつかっているとき、一人の尼法師が入湯して来た。
上品でなまめかしい、抱きつきたいがそうはいかない。そこでこっそり足を伸ばして、股ぐらとおぼしいあたりをコチョコチョ、尼はびっくりして怒る。
敏はすかさず、
「とても世を よそに古江ふるえのあま小舟 葦のさわりをなにいとうらん」と詠む。
つまり遠浅の海で、海草とりをしている海女あま(尼)の舟が、入江の葦(足)に触れたからといって、別に気にすることはありますまい、という図々しい歌だ。
尼さんもさすが歌よみ、半分オツな気分になったのか、
「さらばく さおさし寄せよ世の海の 海松布みるめ(食用の海草)をなおも いとうあま舟」と返歌した。
つまり、あたしはもう男を絶った尼。人の見る目(海松布)が大変だから、誰も来ないうちに、棹を私の舟にさしてごらん、というのだから、これはどっちもどっち。

定本艶笑落語 小島貞二編より

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